先日、保険についての記事をアップしたところ、がん保険について詳しく書いてほしいという要望があったので、今日は「がん保険が不要な理由」について解説します。
世間では2人に1人ががんになる時代と保険会社のキャッチコピーで不安を煽られていますが、結論から言うと、がんは公的保険と貯蓄で十分カバーできます!
本記事では、がん保険についてどう考え、どう判断すればいいのかを統計等用いて詳しく解説するのでよかったら参考にしてみてください。
目次
そもそもなぜ保険に入るのか
そもそも保険は確率は低いが起こると致命的なダメージ(数千万単位)を受けることに備えるために入るものです。
この本質から外れた保険に入ってしまうと、必要のない保険に入ってしまい「保険貧乏」になってしまいます。
「よくわからないからとりあえずかけておく」「保険に入っていればなんとなく安心」
こんな風に安易に保険に入ってしまっては絶対にダメです。
保険は人生の四大出費のひとつです。
大きなお金をかけることになるので、その保険についてしっかり理解し必要なものを必要な分だけ選ぶことが大切です。
数字でがんについて見てみよう
2人に1人ががんになる時代だから、がん保険に入らないと不安だとか、親族や友人ががん保険に入っていて助かったなど、感情と一緒に考えてしまうと話が一向に進みません。
- どのくらいの治療費がかかるのか
- がんにかかる確率
- がんで死ぬ確率
- がん保険の払込総額
- がん保険でいくら返ってくるのか
などまずは数字で損か得かを判断するのが合理的ではないでしょうか。
これらの数字をみていくとがんになることはそれほど致命的ではないことと、がんにかかるリスクに備えるためにがん保険に入ることは非常にコスパが悪いことが見えてきます。
では数字で検証していきます。
2人に1人がガンにかかる時代
国立がん研究センター:https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
上の図は国立がん研究センターが公開している生涯でがんに疾患する確率です。(生涯というのがポイント)
これを見ると確かに2人に1人ががんにかかるというのは事実です。
ではもう少し詳しく調べてみましょう。
国立がん研究センター:https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
これは年齢別がん疾患リスクです。
この図によると
男性
30歳までにがんになる確率0.5%
60歳までにがんになる確率7%
女性
30歳までにがんになる確率0.6%
60歳までにがんになる確率11%
ということが分かります。そしてこの数字は=死亡率ではないことにも注意が必要です。
働き盛りのときにがんにかかる確率はかなり低いですね。
図から平均寿命に近づくにつれがんになる人が増えていて、生涯合算で2人に1人ことがわかります。
がんになっている人の多くが高齢者というのが、2人に1人ががんになる時代の正体でした。
がんで死ぬ確率
国立がん研究センター:https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
2017年のデータでは生涯でがんで死亡する確率は、男性25%(4人に1人)、女性15%(7人に1人)でした。
同様に死亡率も年代別で見てみます。

国立がん研究センター:https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
60歳の定年までにがんで死ぬ確率は2%ということが分かります。
この2%のリスクに備えるためにどれほどのコストがかかり、2%が起こった時にどれだけ保証されるのかを考えていく必要があります。
がん治療の自己負担額
結論から言うと、がん治療に必要な費用の目安(入院費、保険外治療、民間療法含む)自己負担額の合計は149万5000円です。
参照:レファレンス共同データベース
出典:AFLAC医療費調査「がんの治療にかかわる経済的アンケート」(2003年3月実施。調査対象はがん保険給付金・保険金受取人で有効回答数432人)。
自己負担の内訳は下図の通りです。
国立がん研究センター:がんになったら手に取るガイドより画像引用
ですが当然、治療にかかる費用は、がんの種類、病状、治療内容などによって変わります。また、2年ごとに医療費の価格設定(診療報酬)が見直されるため、年によっても違いが出てきます。
なので、治療を受けるにはいくらぐらいお金がかかるの?という問いに対しては、「具体的な治療法が決定したら、がん相談支援センターにお問い合わせください。」という回答が最も適切だと思います。
平均自己負担額はあくまで目安として考えてください。
しかし最近は、診断された病名・症状と治療内容、入院日数などの組み合わせに応じて、医療費をある程度定額化した診断群分類包括評価(DPC)を導入する医療機関がふえてきました。
そうした医療機関では、入院前など比較的早い段階で、医療費の大まかな目安を把握できるようになりました。
不安の正体は「知らないこと」がほとんどです。
具体的にいくらかかるのかを明らかにすることでこうした不安は解消されると思います。
がん保険の払込総額

DAIちゃんさん「がん保険を考える(2)」より画像引用
上の画像はDAIちゃんさんの記事「がん保険を考える(2)」より、保有契約件数NO.1アフラックの「生きるためのがん保険Days1」という商品の払込総額を表したものです。
加入する年齢にもよりますが、だいたい200万円くらい総額で払い込むことになるようです。
他のがん保険商品も概ね100~300万程度となっています。
がん保険でいくら返ってくるのか
上記の「生きるためのがん保険Days1」でいくら返ってくるのかを表にまとめてみましした。
診断給付金 | がん 50万円 上皮内新生物 5万円 |
---|---|
特定診断給付金 (所定の条件に該当) |
がん 50万円 |
入院給付金 | 1日につき1万円 |
通院給付金 | 1日につき1万円 |
手術治療給付金 | 1回につき20万円 |
放射線治療給付金 | 1回につき20万円 |
抗がん剤治療給付金 | 治療を受けた月ごと10万円 |
ホルモン剤治療給付金 | 治療を受けた月ごと5万円 |
参照:https://www.aflac.co.jp/gan/days1/
上の表を見ると、保険に入ってすぐにがんになれば払込んだ額以上に返ってきそうですが、高齢になったときにがんになっても払込額以上の給付金は返ってこないでしょう。
上の表は「生きるためのがん保険Days1」という保険を具体例として挙げましたが、たの保険商品も同じです。
一例として
30歳の人が毎月3000円払ってがんなると100万円もらえる商品があるとします。
するとこの商品は27年以内にがんになったら得、それ以上なら損です。
(入院給付とか条件によって実際はもっと複雑ですがあくまで基本の考え方です。)
では先ほどのがんになる確率にもどって、30歳の人が57歳までにがんになる確率を見てください。
そして掛け金は毎月払い続けるので、50歳とかにがんになってもほんの少し得なだけです笑
若いうちからがん保険に入って数%の確率に当選してほんの少し得をするよりも、その分投資に回して長期間運用すれば、資産を大きく増やしてがんのリスクに備えることができるのではないでしょうか?
公的保険と貯蓄で十分カバーできる
僕たちは高い税金や毎月給与から公的保険料を納めているだけあって、日本の公的保険はすごく手厚いです。
会社勤めの方は、会社が半分も負担してくれていますので実際のその額はすごく高いです。
既に高い保険料を払っていて、内容も充実しているのでわざわざ民間の保険会社に追加で加入する必要はないです。
以下、公的保険で利用できる制度をまとめました。
高額療養費制度

保険の教科書:https://hoken-kyokasho.com/kougaku-shinseihouhouより画像引用
高額療養費制度については前回の記事「本当に必要な保険はこの3つだけ」で解説していますが、大体の人が月額8万円くらいの自己負担になるという国の制度のことです。
傷病手当金
会社員や公務員であれば、入院などで仕事を休んだときに給料が支払われなくても、健康保険から「傷病手当金」が各種手当てを含む月給の約6割を最長1年6か月間もらえます。
給料が支払われる場合でも、傷病手当金の額より少ない場合はその差額がもらえるのです。
ある程度の貯えがあれば、がん保険で給料を補てんすることは不要と言えるでしょう。
大企業なら付加給付がある場合もありますし、有給休暇もあるので収入が途絶えることはほぼないでしょう。
末期がんなら「介護保険」で自己負担が1割に
40歳以上の人が末期がんになり介護が必要になってしまった場合は、公的介護保険の介護サービスを自己負担1割で利用できます。
障害年金
障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。
もらえる条件
・厚生年金の加入期間中に病気・ケガによる障害を発症
・年金制度に加入して納付または免除されている
もらえる金額
月額6万円~16万円(障害の重さと納付額によって変化)
もらえる期間
働けるようになるまで
給付条件に達しない障害の場合でも、一時金として最低116万9千円の障害手当金がもらえることも要チェックです!
雇用保険
病気が原因で失業して働ける状態になったとすると、次の職を探すまでの間、最大10ヶ月の失業給付が受けられる可能性があります。
自営業の場合は
自営業(フリーランス)の場合は、国民健康保険なので傷病手当金や障害年金はないです。
しかし、高額療養費制度は使えるので自己負担額は先に述べたように、100~200万円におさまるでしょう。
つまり最低限の生活防衛資金(300万円程度)を持っていればがん保険は不要です!
ガン保険に入ったほうがいいという意見に対する反論
ここまでがんに関するデータやがん保険に対する僕の考えをお話ししましたが、こういう話をするとと以下のような意見が必ずといっていいほど出るので、それぞれ回答します。
家族や知人ががん保険に入っていて得をしたという意見
がん保険は不要!という意見を言うと、必ずと行っていいほど「家族や知人がガン保険に入っていて得した」と言われます。
でも考えてみてください。
一定数得する人は必ずいますよ。パチンコや競馬などと同じです。
ギャンブルで当たった人がいるという過去の事例を出してもしょうがないですよね。
がんのリスク考え、それに備えるために保険は適切かという話をしています。
保険は確率は低いが起こったら致命的なダメージを受けることに備えるものです。
がんは公的保険と貯蓄で備えられるので、決して今後の人生に致命的なダメージをあたえるものではないです。
損したか得したかの話は本質ではありません。
高額療養費制度以外にもかかる経費があるという意見
差額ベッド代
食事代
など患者の希望によって受けるサービスには高額療養費制度は適応されません。
しかし考えてみてください。これらは言ってみれば贅沢費です。
繰り返しになりますが「保険は確率は低いが起こったら致命的なダメージを受けることに備えるもの」です。
差額ベッド代がないと致命的なダメージを受けますか?
食事代は保険で備えなくても健康でもかかりますよね?
先進医療特約が使えるじゃないかという意見
先進医療は高額療養費制度が適用されないじゃないか、という意見もあります。
しかし、厚生労働省が発表したデータでは2013年の入院患者134万人中、先進医療を受けた人は約2万人で割合で言うと1.5%しかいません。

年間実施件数の多い先進医療の中でも、がん治療に用いられる陽子線治療や重粒子線治療ですが、陽子線治療は年間2,170件、重粒子線治療は年間1,286件で多いように見えます。
しかし、現在治療中のがん患者が約152万人※ということを考えると、がん患者全体の中で陽子線治療もしくは重粒子線治療を受ける割合は約500人に1人(0.22%)と、かなり低いことがわかります。
※(出典)厚生労働省 平成23年患者調査
これら先進医療を使ったからといって必ずがんが治るわけではありません。
もし、これら先進医療ががんに対して効果が高いことがわかれば、将来的に保険適用の治療になるでしょう。
世の中の保険の情報はバイアスがかかっている
世の中に溢れている保険に関する情報のほとんどが保険会社が運営していたり、アフィリエイトです。
アフィリエイトをやっていればわかるのですが、保険のアフィってめちゃくちゃ単価が良いんです。(裏を返せば保険はすごく儲かる商品ということ)
お金のプロといわれているFP(ファイナンシャルプランナー)も保険の手数料は大きな収入源となっています。
無駄ながん保険にお金をかけるなら
なぜ僕がここまでがん保険についていろいろと知っているかというと、2年前に母親ががんにかかったときにいろいろと調べたからです。(今は治療も終わり、仕事に復帰していて元気です。)
母親はがん保険に加入していて、保険に入っていてよかったと僕に加入を強く勧めてきたので本を買ったりしてかなり調べました。
母親に実際にどのくらい治療費がかかったのかや保険でどの程度返ってきたのかも聞きました。
詳しく調べていくうちに分かったのが
・母親のように50代でがんにかかる確率はかなり低いこと
・がん保険で得をした額は50万円程度
ということで単に確率数%の宝くじに当たってラッキーだっということでした。
ということで、僕にがん保険の加入を勧めてきた母親には不要な理由を説明して、加入しないことに納得してもらいました。
がん保険のようなムダな保険にお金をかけるのではなく、最低限の医療費をさっさと貯めて、余ったお金で投資(積立NISA、iDeCo等利用)をすることを強くオススメします。
若いうちから投資をして時間というレバレッジをかければ資産は大きく増えること間違いありません!
長くなりましたが、以上でがん保険が不要な理由の解説を終わります。
この記事が少しでもみなさんが豊かな人生を送るための役に立てれば幸いです。
もっと詳しくがん保険を始めとする保険について知りたい方は「いらない保険」という本をおすすめします。
興味がある人はぜひ読んでみてください。